電話で訃報を伝えるときの言葉選び ~迷う瞬間に備える心構えと伝え方~
人が亡くなるという出来事は、予期できる場合もあればまったく予想もしなかった形で訪れることもあります。悲しみや動揺の中で遺族はさまざまな実務に追われます。その中でも負担の大きいもののひとつが訃報を伝えることです。
とくに電話での連絡は避けられず、しかも多くの場合はすぐに伝える必要があります。けれども「なんと切り出したらいいのか」「どのくらい説明すればいいのか」と迷う方は多いもの。だからこそ落ち着いた言葉選びが求められます。
電話で訃報を伝えるときは「落ち着いて、要点を簡潔に、相手に配慮した言葉を選ぶこと」が最も大切です。自分の名前を名乗り、誰がいつ亡くなったのかを端的に伝え、通夜や葬儀の日程を添えるのが基本です。また相手との関係性に応じて言葉を調整し感情的になりすぎず、形式ばかりにもならないバランスが重要です。
今回は、電話で訃報を伝える際の基本の流れ・相手別の例文・注意点を紹介したいと思いいます。
訃報を電話で伝える基本の流れ
電話は要点を端的に伝える手段です。長々と説明すると相手が混乱することもあります。
基本の5ステップ
- 自分の名前を名乗る
- 「突然のご連絡で失礼します」と前置きを入れる
- 誰が、いつ、亡くなったのかを端的に伝える
- 通夜・葬儀の日程など、分かっている範囲の情報を伝える
- 未定の場合は「決まり次第ご連絡いたします」と添える
例文
「突然のお電話で失礼いたします。◯◯の家族の〇〇です。本日◯時に、◯◯が息を引き取りました。通夜と葬儀の日程はまだ未定ですので、決まり次第ご連絡させていただきます。」
【相手別】シーンごとの伝え方
電話を受ける人の立場や年齢によって、同じ言葉でも響き方は違います。ここでは具体的なケースを想定してみましょう。
中学生や高校生に伝える場合
「落ち着いて聞いてね。実は◯◯さんが昨日亡くなりました。突然のことだから驚くと思うけれど、無理に我慢しなくていいから、つらかったら誰かに話してね。」
ポイント
- 若い世代には率直に事実を伝える
- 受け止める準備やサポートを促す言葉を添える
社会人の友人に伝える場合
「突然の連絡でごめん。実は◯◯が亡くなったんだ。通夜は◯日、葬儀は◯日に行う予定だよ。」
ポイント
- 形式ばらずに伝えてよい
- 日程など必要な情報は必ず伝える
職場の上司や関係者に伝える場合
「お忙しいところ失礼いたします。私の父◯◯が、昨日亡くなりました。通夜・葬儀に参列するため、◯日からお休みをいただきたくご連絡いたしました。」
ポイント
- 感情よりも事務的に要点を優先
- 「ご迷惑をおかけしますが」を添えると丁寧
親戚や近しい人に伝える場合
例文
「◯◯が本日◯時に息を引き取りました。長い間、本当にお世話になりました。通夜は◯日、葬儀は◯日に予定しています。」
ポイント
- 感情を交えても自然
- 「ありがとう」「お世話になった」などで気持ちを共有
訃報を伝える際のマナーと配慮
言葉だけでなく、連絡の仕方そのものにも注意すべき点があります。
連絡する順番
- 近しい親族(最優先)
- 親しい友人
- 地域・職場の関係者
順番を誤ると、不信感や寂しさを与えてしまうことがある。
連絡する時間帯
- 原則:深夜や早朝は避ける
- 緊急の場合は「夜分に恐れ入ります」「朝早くから失礼いたします」と前置きを入れる
声のトーン
- 落ち着いた声で話す
- 感情を抑えつつも機械的にならないようにする
- 声が震えてしまっても構わない
大切なのは「相手に正しく伝える責任を果たすこと」でしょう。
避けた方がよい言葉や伝え方
訃報を伝える場面では、とくに言葉選びには意識したほうがよいでしょう。
直接的すぎる表現は避ける
- NG例: 「死んだ」「あの世に行った」
- OK例: 「亡くなった」「逝去した」
詳細を語りすぎない
- 尋ねられても必要最小限の説明にとどめる
長々と弔辞めいた言葉を述べない
- 電話は連絡手段に徹する
- 故人を偲ぶ言葉は葬儀の場で伝える
大切なのは「伝える勇気」と「相手への思いやり」
電話での訃報連絡は、電話をする方も受ける方も心に重くのしかかります。しかし避けることはできません。
重要なポイント
- 正しく伝える勇気
- 相手を思いやる一言
- 「突然のお電話で失礼します」「取り急ぎご連絡いたしました」などクッション言葉を添える
まとめ
訃報の言葉は難しいものですが、迷いながらも言葉を選ぶ過程こそが残された人と故人をつなぐ大切な時間です。電話での短い数分間に込められるのは、ただの情報ではなく思いやりそのものです。
突然の場面で慌てないよう基本の流れを頭に入れ、相手との関係に応じて言葉を選ぶ。そして何より故人を大切に思う気持ちを込めて伝えることが大切です。